春の不調は漢方で~胃腸編~


『春の不調は漢方で~胃腸編~』

漢方の視点で春は、五臓の「肝」と深く関係しています。では「脾(胃腸)とは関係ないのでは?」と思いますが、身体は繋がっているので、大いに関係するんです。

伸び伸びすることが大好きな「肝」は、気候の変化(寒暖差など)、生活環境の変化(就職、転勤、入学、人間関係)などのストレスで抑制を受けると、「肝」の機能である疏泄(そせつ)が失調します。今の言い方だと、自律神経が乱されます。胃腸は、自律神経でコントロールされているため、乱れて胃腸機能が失調します。

症状として


🔹腹痛が起こる
🔹お腹が張る
🔹ゲップやガスがよく出る
🔹消化不良
🔹緊張するとすぐにお腹を下す
🔹下痢をしやすくなる
🔹便秘になりやすくなる
🔹便秘と下痢を繰り返す
など


漢方は、胃腸に注目して対処するのではなく、根本の原因である肝をケアして、自律神経の乱れを戻すことにより、胃腸の不調を起こりにくくします。

 


それでは、肝の疏泄が乱れて胃腸失調をきたした時に使用する漢方薬と養生をご紹介します。

<<漢方薬>>


ファーストチョイス


救心感應丸氣(きゅうしんかんのうがんき)


 なれない環境や、入学式/入社式などで緊張すると、お腹を崩してしまうような、急な対応にオススメしています。何回か服用して下痢が起きなくなると、「私は大丈夫だと」思うようになり、自信がついて下痢が起きにくくなることが多いです。

 


お腹が張ったり、脹るような腹痛の時


柴胡疎肝湯(さいこそかんとう)
柴芍六君子湯(さいしゃくりっくんしとう)
四逆散(しぎゃくさん)

 


便秘傾向になりやすい方


イスクラ 逍遙顆粒(しょうようかりゅう) + 体質に併せた瀉下薬※

※便秘にすでになっている場合、体質に併せて大黄甘草湯、調胃承気湯、桃核承気湯などを使います。

 


<<養生>>


🔶深い深呼吸を行う


 鼻から5秒程度で息を大きく吸って、10秒以上かけて口からゆっくり息を吐く。
一日何度でもOK。とくに緊張などストレスを感じる前、感じた時に深呼吸を行うと緊張を和らげることができますよ(^^b


🔶好きな事してストレスを溜めない


🔶アロマなどを使い、好みの芳香で過ごす


🔶朝日を浴びてリフレッシュ


🔶十分な睡眠をとる


🔶脂物、味の濃いもの、甘い物を控える


🔶おすすめ食材


香草野菜(セロリ、春菊、三つ葉、しそ)
柑橘類(オレンジ、みかん、グレープフルーツ、レモン、ゆず)
苦うり、レバー(牛、豚)イカ、あさり、しじみ


以上、ご紹介した漢方薬と養生で胃腸の不調を減らし、春を元気で健やかに過ごす助けになれば幸いです(^^)

 


<注意>
本ページで掲載している漢方薬は一例です。
個人の体質、その日の体調、生活習慣、生活環境などにより使う漢方薬は変わります。
漢方の知識を持った専門家(医師、薬剤師、登録販売者)に相談して適切な漢方薬を購入し服用してください。

熊本 菊陽町 菜の花漢方堂

胃の不調(機能性ディスペプシア)は漢方で治そう


『胃の不調(機能性ディスペプシア)は漢方で治そう』

病院の検査で異常(病変)は見られないが、胃のもたれ、膨満感、食欲不振、吐き気、胃痛などの胃腸症状を訴える相談は多いです。

機能性ディスペプシアとも呼ばれ、生活習慣や体質が相まって原因は様々で複雑です。
こんな時は、体質などを鑑みて薬を決める漢方がお役に立てます。

以下に機能性ディスペプシアで使われる、漢方薬の一例を示します。

<漢方薬>


🔷胃のもたれ、膨満感

六君子湯(りっくんしとう)
香砂六君子湯(こうしゃりっくんしとう)
加味平胃散(かみへいいさん)

 


🔷冷えからきている胃痛


・下痢を伴う
人参湯(にんじんとう)
附子理中湯(ぶしりちゅうとう)


・お腹の中が動いている感じが伴う
大建中湯(だいけんちゅうとう)


・子供(中学生くらいまで)の胃痛
小建中湯(しょうけんちゅうとう)

 


🔷食欲がなく、食べるとすぐに下痢をする

参苓白朮散(じんりょうびゃくじゅつさん)

 


🔷ストレスからくる腹痛

柴胡疎肝湯(さいこそかんとう)
香砂六君子湯(こうしゃりっくんしとう)

 


🔷疲れからくる胃痛

黄耆建中湯(おうぎけんちゅうとう)

 


ご紹介した漢方薬を服用しながら、次に示す養生を実践していくことで、回復が早まり、また胃腸不調を起こしにくい体作りができます。

<養生>


🔸お腹が空いてから食べる
消化の良い、温かい物をよく噛んで食べる

🔸冷たい飲食物を避ける

🔸食べてすぐに寝ない
夕食から就寝までの時間を3時間以上あける

🔸間食を控える(特に夜の間食)

🔸体を冷やさない

🔸十分な休息

 


機能性ディスペプシアは、体質と様々な要因が絡み、漢方薬の選びは難しいかもしれません。購入時は、漢方の専門家へ相談することをお勧めします(^^b

 


<注意>
本ページで掲載している漢方薬は一例です。
個人の体質、その日の体調、生活習慣、生活環境などにより使う漢方薬は変わります。
漢方の知識を持った専門家(医師、薬剤師、登録販売者)に相談して適切な漢方薬を購入し服用してください。

熊本 菊陽町 菜の花漢方堂

腹痛(胃痛)


腹痛(胃痛)は、原因が1つではなく重なっていたり、下痢、吐き気などの症状を伴ったりと複雑です。
原因は様々ですが、ここでは、相談でよくある4つの原因に絞って、腹痛が生じる機序を説明し、対応する漢方薬の一例をご紹介します。


1)冷え
2)瘀血
3)気の滞り
4)水の代謝が悪い

 


1)冷えからくる腹痛


冷えの腹痛は、2つに分けて考えることが多いです。


1つ目は、冬の寒い時期や夏場のクーラー、冷たい飲食物の摂りすぎなどで体に冷えが入り込み腹痛が起こる場合です。
急性で痛みが強い腹痛であることが特徴です。


<漢方薬>
附子理中湯(ぶしりちゅうとう)
人参湯(にんじんとう)
大建中湯(だいけんちゅうとう)
小建中湯(しょうけんちゅうとう)


(補足)
外からの寒邪が原因の場合は、散寒と言って体内の寒さを散らす薬を用いて痛みを緩和していきます。また、冷たい飲食物によって脾胃が湿も伴っている場合は、去湿といって湿を取り去る薬も用いて、痛みの原因を取り除きます。


2つ目は、過度な疲れ、長期間の病気等で体が弱ってしまい、体内の温める力(温煦作用)が弱まり、冷えが生じて腹痛が起こります。
繰り返し起こる腹痛であることが特徴です。


<漢方薬>
健胃顆粒(けんいかりゅう)
人参湯(にんじんとう)
大建中湯(だいけんちゅうとう)
呉茱萸湯(ごしゅゆとう)


(補足)
体が弱り冷えを生じての腹痛は、温裏散寒といって、温めて寒さを散らす薬を用いて、痛みを緩和させます。そして、補気健脾といって、元気を作り出す元となる脾胃を立て直す薬を用いて、腹痛が起こりにくい体へ持っていきます。

 


2)瘀血からくる腹痛(主に生理痛)


生活習慣の悪化、長期化した病などがあると、血に熱をもったり、血を送り出す力が弱くなったり、血の量が不足したりして、血の停滞/巡りが悪くなる状態(瘀血:おけつ)を生じます。
血の巡りが悪くなり、血が行き渡らないと痛みが起こります。
この痛みは部位が固定して、刺すような痛みが特徴です。
生理痛は、瘀血が主な原因であることが多いです。


<漢方薬>
桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)
当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)
婦宝当帰膠B(ふほうとうきこう)
桃核承気湯(とうかくじょうきとう)
折衝飲(せっしょういん)


(補足)
活血化瘀と言って瘀血を解消すると共に、熱があれば熱を取り去る薬、血が少なくなっていれば血を補う薬、血を動かす力が不足していれば気血を巡らす薬と、体の状態に合わせて漢方薬を使い分けて、痛みを緩和し、腹痛が起こりにくい体へしていきます。

 


3)ストレスなどからくる腹痛


ストレス、強い緊張などがあると体の気の巡りが悪くなります。気は血を動かす推動力でもあるので、血の巡りも悪くなります。

気血の巡りが悪化、停滞すると、脾胃の機能失調をおこし、痛みが発生します。張ったような腹痛が生じるのが特徴です。


<漢方薬>
開気丸(かいきがん)
柴胡疎肝湯(さいこそかんとう)
柴芍六君子湯(さいしゃくりっくんしとう)
香砂六君子湯(こうしゃりっくんしとう)


(補足)
気の巡りを良くするお薬を用い、痛みを取り除いていきます。ストレスにより脾胃も傷んでいる場合は、脾胃の機能を立て直す薬も使います。また、気の停滞により脾胃に熱、湿が発生している場合は、それらを取り去る薬を用いることがあります。

 


4)水の代謝の悪化による腹痛


冷たくなくても過度に飲み物を摂取したりすると、胃腸機能が低下し、水がさばけず、腹痛が発生します。急性で、下痢を伴うのが特徴です。


<漢方薬>
加味平胃散(かみへいいさん)
五苓散(ごれいさん)
藿香正気散(かっこうしょうきさん)


(補足)
水をさばく作用(利水作用)のある薬を用い、原因のもとである水を取り除くとともに、多量の水分によって、湿・冷えが生じている場合は、それらを取り除く薬も用いて腹痛を改善していきます。

 


<注意>
長く腹痛が続いていたり、痛みが強くなっている場合は、病院での検査を推奨しています。
漢方での対応も有効ですが、検査結果次第では、西洋治療と漢方を併用することで治りが早い場合があります。