いぼ痔、切れ痔、痔ろう

<痔の種類>
痔には、いぼ痔(痔核)切れ痔(裂肛)あな痔(痔ろう)の3種類があります。



<いぼ痔>
いぼ痔は、内痔核と外痔核に別れます。
専門的に言うと肛門にある歯状線より内側にできたものを内痔核、歯状線より外側にできたものを外痔核と言います。
内痔核は内部でわかりづらいですが、外痔核(外にできるいぼ痔)は、見えるのでわかりやすいですね。
いぼ痔は、肛門付近および直腸付近にある細い静脈のうっ血で起こります


・座りっぱなしの仕事
->物理的に肛門付近の静脈を圧迫するので、うっ血を起こし、いぼ痔に
・便秘で排便時に強くいきむ
->いきむときに細い静脈の流れが止まり、うっ血が起こりやすく、いぼ痔に
・お酒の飲みすぎ、辛い物、甘い物、脂っこい物の摂りすぎ
->肛門付近にある細い静脈は、心臓や門脈通じて肝臓とつながっており、肝臓に負担をかける食事をしていると肝臓への血液の流れが滞りうっ血しやすくなりいぼ痔に

 


<切れ痔>
切れ痔は、肛門の皮膚が切り裂けた状態を言います。
便秘で排便時に強くいきみ、固くなった便が排出されるときに肛門の上皮部分が裂けたり切れたりして起こります。

 


<あな痔(痔ろう)>
痔ろうは、直腸が細菌により炎症や化膿を起こし、膿がたまります。進行していくことにより、トンネルができて外部の肛門周囲とつながってしまった状態を言います。免疫力の低下、血行不良が原因と言えます。


中医学の観点から言うと以下が原因と捉えます。


1)瘀血
肛門付近の血液の流れが悪くなった状態

2)肝胆・大腸湿熱
お酒の飲みすぎ、辛い物、甘い物、脂っこい物の摂りすぎにより
湿熱(体に病的な水が熱をもった状態)が肝、大腸を傷めた状態

3)気虚
血液の推動力低下及び、睡眠不足、過労等々での免疫力低下


漢方で「痔(ぢ)」の対処をする時は、血行を良くしながら、肝臓、大腸の改善をはかります。但し、出血を伴っている時は、止血を優先させます。

漢方薬の一例を紹介致します。


◆痛み、腫れを伴う時

乙字湯(おつじとう)

麻杏甘石湯(まきょうかんせきとう)

 


◆痛み、腫れ、出血を伴う時

槐角丸(かいかくがん)

 


◆痔の症状に加えて、痒みがある時

消風散(しょうふうさん) を合方

 


◆痔の症状に加えて、便秘がある時
乙字湯が便秘もケアしていますが、回復しない時は、便秘用の漢方薬を合方します。以下に漢方薬の一例を挙げていますが、体質、便の状態等によって使う漢方薬は変わります。必ず専門家と相談して適切な漢方薬を選んでください。

大黄甘草湯(だいおうかんぞうとう)

調胃承気湯(ちょういじょうきとう)

潤腸湯(じゅんちょうとう)

麻子仁丸(ましにんがん)

 


<養生>
痔の回復は、日頃の養生が何より大事です。漢方薬を服用しながら、


・お酒を控える
・辛い物、甘い物、脂っこい物を控える
・座り仕事の人は、頻繁に立って適度な運動で血行促進する
・しっかり睡眠と休息をとる


ことを意識して、回復を目指していきましょう。

 

繰り返しになりますが、痔の早期回復と再発防止は、生活習慣の改善にかかっています。

生活習慣を見直して、痔にならない体作りをしていきましょう(^^)

本ページが、痔を患っている方の力に少しでもなれたら幸いです。

 


<注意事項>
1)痔ろうの場合は、病院にて適切に膿を取り除いてもらい、つながったトンネルをまず塞ぐことを優先して下さいとお話ししています。
漢方薬は、病院での処置後の回復や手助ける。または血行を良くする、便秘改善等で、痔瘻を悪化させないという補助的な使い方をされると良いと思います。

2)本ページで掲載している漢方薬は一例です。
個人の体質、その日の体調、生活習慣、生活環境などにより漢方薬は変わります。
漢方の知識を持った専門家(医師、薬剤師、登録販売者)に相談して適切な漢方薬を購入し服用してください。


熊本県 菊陽町 菜の花漢方堂

貧血(血の消耗量と体内血量のバランスの崩れ)

貧血は、血の不足であり、漢方で血虚(けっきょ)と言います。

クラッとする目眩(めまい)をイメージする方が多いと思われますが
他に血虚で現れる症状は、


・月経時の経血量が少ない
・月経の周期が長い
・生理が来ない
・冷え
・不眠(入眠困難・多夢)
・心神不安(精神不安)
・手足のしびれ
・爪がもろく割れやすい
・髪がパサパサ乾燥する・抜け毛が多い
・便秘


など、たくさんあります。

根本の原因は、


血の消耗量  体内血量


上回るバランスの崩れです。


※体内血量は、造血能力、血の貯蔵能力、血の材料が十分にあるかに依存


血の消耗量が増える要因は、


生理・妊娠・出産・授乳・更年期
疾病・ケガ
ストレス・夜ふかし・目の酷使・過労


などです。また、これらの要因が


血液の材料を取り出す・・・・
造血量を制御する・・・・・・・・
血の貯蔵・量を調節する・・・


の機能を低下させ、体内の血量が減り、血の消耗量より下回ると血虚になる場合があります。

 


それでは、漢方での貧血(貧血による血色不良を含む)への対応をご紹介します。

肝・腎・脾の弱りを見極めながら次のような漢方薬を使っていきます。

<漢方薬の一例>


🔶脾の弱り(脾虚)が主な貧血原因になっている場合
貧血以外に胃腸虚弱、食欲不振、疲れやすいなどの症状を伴うことが多いです


十全大補湯(じゅうぜんだいほとう)
帰脾湯(きひとう)

 


🔶肝の弱り(肝血虚)が主な貧血原因になっている場合
怒りやすい、目のかすみ、足がつりやすいなどの症状を伴うことが多いです


婦宝当帰膠B(ふほうとうきこうB)
当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)
四物湯(しもつとう)

 


🔶腎の弱り(腎虚)が主な貧血原因になっている場合
腰痛、腰のだるさ、冷え、難聴、尿もれなどの症状を伴うことが多いです


参茸補血丸(さんじょうほけつがん)
霊鹿参(れいろくさん)


なお貧血は、不眠、気分の落ち込みなども併発する症状は上記だけではないです。必要に応じて漢方薬を合方していきます。

 


次に養生です。
漢方での回復を目指す時は、養生割、薬と言われています。”早期回復”と”再発防止のため”に養生は、最も優先すべきことです。

<養生>


🔸お腹が空いてから食べる
🔸消化の良い、温かい物を腹八分目で食べる
🔸冷たい飲み物と一緒に食事をとらない
🔸食事に酢の物を一品摂り入れる(鉄、ミネラルを効率よく吸収するため)
🔸バランスのよい食事を摂る(血は、タンパク質、ミネラル、ビタミンなど様々なものがあって産生されるため)
🔸適度な運動、入浴で血の巡りをよくする
🔸筋肉を鍛える(血を多く消費する筋肉をつけることで、体に血のもっと必要であることを教える)

 


貧血は、体の様々な不調、体質、生活習慣などをしっかりお聞きし、原因を見極める必要があります。心当たりのある方は、まずご相談下さい😊

 


<注意>
本ページで掲載している漢方薬は一例です。
個人の体質、その日の体調、生活習慣、生活環境などにより使う漢方薬は変わります。
漢方の知識を持った専門家(医師、薬剤師、登録販売者)に相談して適切な漢方薬を購入し服用してください。

熊本 菊陽町 菜の花漢方堂

 

 

関節痛(膝、腰、肩など)


<<関節痛>>


関節痛は、次の4つに着目し、原因を見極めて対応することが多いです。


1)血の不足
2)血と水の滞り
3)筋(スジ)・骨・筋肉の弱り
4)風邪、寒邪、湿邪の侵襲


1)~4)に関して説明します。


1)血の不足
胃腸虚弱、食欲不振、偏食、無理なダイエット等が元にあり、栄養を十分に得ることができず、血を必要分作れないようになり、血の量が減少し、栄養を巡らせることができなくなっている状態


2)血と水の滞り
肥甘厚味(ひかんこうみ)と言って、脂物、甘い物、味の濃い物の食べ過ぎで、血・水が濁り、巡りが悪くなり滞ってしまう状態。運動不足でも血・水の巡りが悪くなり滞ってしまうことがあります。また、1)の血不足で血が少ないと滞りが生じます。


3)筋(スジ)・骨・筋肉の弱り
1)または2)が長く続き、筋・骨・筋肉が弱りだした状態

余談ですが、筋(スジ)は『肝』※1、骨は『腎』※2、筋肉は『脾』※3に深く関係すると考えます。


※1『肝』は、全身の筋を養っており、肝の血が不足すると筋の疾患が起こります
※2『腎』は、人体の成長・発育・生殖にかかわる腎精という物を貯蔵し、腎精が髄に変化し骨を養います。よって腎精が不足すると骨の疾患が起こります
※3『脾』は、胃腸の消化吸収を担い、胃腸から栄養を摂り入れることができないと、十分な筋肉が作れないなどが起こります


4)風邪、寒邪、湿邪の侵襲
外から体に影響を及ぼすものを外邪と言います。特に関節痛へ影響するのは、風邪、寒邪、湿邪です。例えば風邪であればカゼを引いて関節が痛む。寒邪であれば寒くなると膝が痛む。湿邪であれば雨に濡れた後、または梅雨時期に関節が痛むなどです。

 


<<漢方でのアプローチ>>

上記、4つのポイントを踏まえて、次の特徴を持つ漢方薬を組み合わせて関節痛へ対応していくことが多いです。


健脾益気・・・弱った胃腸を元気に
活血養血・・・血を補い、滞りを無くす
補肝益腎・・・弱った肝と腎を元気に
通絡・・・・・塞がった経絡を通す※4
去風寒湿邪・・関節を痛める原因である風寒湿邪を取り除く


※4『経絡』は、人体の中の気(エネルギー)・血・体液などの生きるために必要な物が流れる通路


経験則ですが、関節痛は1つの原因ではなく、複数の原因が重なっています。よって、その人にあわせてベースで使用する漢方薬や、併用する漢方薬は変わります。

 


<<漢方薬の使用例>>
当店での関節痛相談でベースとして使用した漢方薬例をいくつかご紹介します。


・冷えると腰、膝の関節が痛みだす。主に下半身の関節痛
苓姜朮甘湯(りょうきょうじゅつかんとう)


・冷えると肩、首のあたり、肘、手首の関節が痛みだす。主に上半身の関節痛
桂枝加朮附湯(けいしかじゅつぶとう)


・加齢に伴い腰、膝の関節が痛む。屈伸が困難である
独歩顆粒(どっぽかりゅう)、五積散(ごしゃくさん)


・関節のむくみ、筋肉のひきつりがあったりして(血と水の巡りが悪い)、関節が痛む
疎経活血湯(そけいかっけつとう)


・肩が痛くて肩が上がらない(五十肩)
独活葛根湯(どっかつかっこんとう)

 


<<回復にどれくらい期間が必要か>>
冷えだけ等の軽度な関節痛であれば、日単位で症状は回復に向かうことが多いです。次に、筋肉が落ちただけ等の中度な関節痛であれば、週単位または月単位で症状は回復に向かいます。骨や筋がひどく弱っている場合は、半年または年単位でかかる場合があります。

但し、軟骨が全く無くなっているなどの関節痛は、漢方薬で対応が困難な場合もございます。お店で状況をお聞かせください。

 


相談では、関節痛の期間、痛みの度合い、体質、生活習慣などをしっかりお聞きし、原因を見極め、あなたにあう漢方薬を提案します。ぜひ、ご相談ください(^^)

 


※注意
本ページで掲載している漢方薬は一例です。
個人の体質、その日の体調、生活習慣、生活環境などにより漢方薬は変わります。
漢方の知識を持った専門家(医師、薬剤師、登録販売者)に相談して適切な漢方薬を購入し服用してください。

熊本 菊陽町 菜の花漢方堂