便秘


便秘は、”一過性(急性)”と”習慣性(慢性)”の2つに分けることができます。


◆一過性便秘(急性の便秘)


🔹旅行先、新学期、就職などで食生活や生活環境が変わった
🔹受験のテスト前、大事な発表会を控えている、就職で生活環境の変化などの精神的要因
🔹暴飲暴食、食事の偏り(肉ばかり食べる等で食物繊維が少ない、ダイエットで食事を摂っていない)
🔹生理前の便秘
🔹汗を大量にかいて、急激な体内の水分低下による腸管内の水分不足
※漢方薬も使いますが、水分補給が優先です


などにより、大腸の動きが鈍るために起こる便秘です。

主に大黄を含む漢方薬を使い便秘に対応します。以下に一例を紹介します。


・便秘の他に気になる症状がない場合
大黄甘草湯(だいおうかんぞうとう)


・食欲旺盛。また、ほてりなどの体に熱を伴う場合
防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)


・便が乾燥して固くて出にくい場合
調胃承気湯(ちょういじょうきとう)


・上半身にほてりがあるが下半身は冷える。また、月経前にイライラする場合
桃核承気湯(とうかくじょうきとう)


・イライラや発熱がある場合
大承気湯(だいじょうきとう)


※冷え性、痩せ気味で少食の人は、服用前に医師、薬剤師、医薬品登録販売者などの専門家へ相談しましょう。
また、漫然と長期で使わず、頓服的な使用をお勧めします。長期に服用する場合は、服用前に医師、薬剤師、医薬品登録販売者などの専門家へ相談しましょう。

 


◆習慣性便秘(慢性の便秘)
繰り返し長く続く慢性的な便秘の事を指し、直腸性弛緩性痙攣性の3つタイプに分けられます。
各タイプを説明し、漢方薬の一例を紹介します。


<直腸性タイプ>
頻繁に便意を我慢することで、便が直腸にあっても便意が伝わらず起こる便秘です。


・仕事上不規則な排便習慣になる方(バス・タクシーの運転手など)
・便意を我慢してしまう女性に多い


大黄を主体として漢方薬を使って、大腸を刺激して便意を起こし、便秘を改善していきます。


大黄甘草湯(だいおうかんぞうとう)

 


<弛緩性タイプ>
大腸の運動機能が低下して、便を送り出す力が弱くなっておこる便秘です。
高齢者や寝たきりの方などに多く、お腹の張りを感じることがあります。
枳実・厚朴・陳皮などを配合する漢方薬を使い、腸の蠕動運動を活発にさせて便秘の改善をはかります。


麻子仁丸(ましにんがん)

 


<痙攣性タイプ>
大腸が痙攣(けいれん)して、便の通りが悪くなり、便意はあるが排便できず便秘になります。また、腹痛を伴うことがあります。麻子仁、桃仁などで腸管内を潤し便の通りを良くし、枳実・厚朴などで腸管の運動を整える漢方薬で便秘の改善をはかります。けいれん性の腹痛を伴う場合は、芍薬という生薬が、腸管の筋肉を弛緩させて対応します。


麻子仁丸(ましにんがん) または 潤腸湯(じゅんちょうとう)

痙攣性の腹痛が強い場合は、以下を合方する
芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)

 


便秘は、漢方薬と並行して次の養生を実践することで回復が早まり、再発防止に繋がります。


<養生>
a)よく噛んで食べる
b)腹八分目で食べすぎない
c)冷たい飲食物は極力控える
d)食物繊維の豊富な食材をバランス良く食事に加える


玄米、胚芽米、麦めし、とうもろこし
煮豆(大豆、うずら豆、あずき)、納豆、おから
ごぼう、ふき、セロリ、アスパラガス、青菜類、キャベツ、白菜
さつまいも、里いも、こんにゃく
しいたけ、しめじ、えのき
わかめ、ひじき、もずく、寒天、ところ天
柑橘類(みかん、グレープフルーツなど)、バナナ、うり類


e)適度な運動を行う
f)夕食と寝るまでの間を3時間以上あける
g)間食は極力控える。特に寝る前は間食をしない。
h)早寝早起きして、朝に排便するリズムを作る

 


漢方薬だけに頼らず、上記養生で生活習慣を見直し、毎日お通じがくる体作りを目指しましょう(^^)
上記に漢方薬をご紹介していますが、漢方薬の選択に迷う場合は、お気軽にご相談ください。



<注意>
本ページで掲載している漢方薬は一例です。
個人の体質、その日の体調、生活習慣、生活環境などにより使う漢方薬は変わります。
漢方の知識を持った専門家(医師、薬剤師、登録販売者)に相談して適切な漢方薬を購入し服用してください。

熊本 菊陽町 菜の花漢方堂

いぼ痔、切れ痔、痔ろう

<痔の種類>
痔には、いぼ痔(痔核)切れ痔(裂肛)あな痔(痔ろう)の3種類があります。



<いぼ痔>
いぼ痔は、内痔核と外痔核に別れます。
専門的に言うと肛門にある歯状線より内側にできたものを内痔核、歯状線より外側にできたものを外痔核と言います。
内痔核は内部でわかりづらいですが、外痔核(外にできるいぼ痔)は、見えるのでわかりやすいですね。
いぼ痔は、肛門付近および直腸付近にある細い静脈のうっ血で起こります


・座りっぱなしの仕事
->物理的に肛門付近の静脈を圧迫するので、うっ血を起こし、いぼ痔に
・便秘で排便時に強くいきむ
->いきむときに細い静脈の流れが止まり、うっ血が起こりやすく、いぼ痔に
・お酒の飲みすぎ、辛い物、甘い物、脂っこい物の摂りすぎ
->肛門付近にある細い静脈は、心臓や門脈通じて肝臓とつながっており、肝臓に負担をかける食事をしていると肝臓への血液の流れが滞りうっ血しやすくなりいぼ痔に

 


<切れ痔>
切れ痔は、肛門の皮膚が切り裂けた状態を言います。
便秘で排便時に強くいきみ、固くなった便が排出されるときに肛門の上皮部分が裂けたり切れたりして起こります。

 


<あな痔(痔ろう)>
痔ろうは、直腸が細菌により炎症や化膿を起こし、膿がたまります。進行していくことにより、トンネルができて外部の肛門周囲とつながってしまった状態を言います。免疫力の低下、血行不良が原因と言えます。


中医学の観点から言うと以下が原因と捉えます。


1)瘀血
肛門付近の血液の流れが悪くなった状態

2)肝胆・大腸湿熱
お酒の飲みすぎ、辛い物、甘い物、脂っこい物の摂りすぎにより
湿熱(体に病的な水が熱をもった状態)が肝、大腸を傷めた状態

3)気虚
血液の推動力低下及び、睡眠不足、過労等々での免疫力低下


漢方で「痔(ぢ)」の対処をする時は、血行を良くしながら、肝臓、大腸の改善をはかります。但し、出血を伴っている時は、止血を優先させます。

漢方薬の一例を紹介致します。


◆痛み、腫れを伴う時

乙字湯(おつじとう)

麻杏甘石湯(まきょうかんせきとう)

 


◆痛み、腫れ、出血を伴う時

槐角丸(かいかくがん)

 


◆痔の症状に加えて、痒みがある時

消風散(しょうふうさん) を合方

 


◆痔の症状に加えて、便秘がある時
乙字湯が便秘もケアしていますが、回復しない時は、便秘用の漢方薬を合方します。以下に漢方薬の一例を挙げていますが、体質、便の状態等によって使う漢方薬は変わります。必ず専門家と相談して適切な漢方薬を選んでください。

大黄甘草湯(だいおうかんぞうとう)

調胃承気湯(ちょういじょうきとう)

潤腸湯(じゅんちょうとう)

麻子仁丸(ましにんがん)

 


<養生>
痔の回復は、日頃の養生が何より大事です。漢方薬を服用しながら、


・お酒を控える
・辛い物、甘い物、脂っこい物を控える
・座り仕事の人は、頻繁に立って適度な運動で血行促進する
・しっかり睡眠と休息をとる


ことを意識して、回復を目指していきましょう。

 

繰り返しになりますが、痔の早期回復と再発防止は、生活習慣の改善にかかっています。

生活習慣を見直して、痔にならない体作りをしていきましょう(^^)

本ページが、痔を患っている方の力に少しでもなれたら幸いです。

 


<注意事項>
1)痔ろうの場合は、病院にて適切に膿を取り除いてもらい、つながったトンネルをまず塞ぐことを優先して下さいとお話ししています。
漢方薬は、病院での処置後の回復や手助ける。または血行を良くする、便秘改善等で、痔瘻を悪化させないという補助的な使い方をされると良いと思います。

2)本ページで掲載している漢方薬は一例です。
個人の体質、その日の体調、生活習慣、生活環境などにより漢方薬は変わります。
漢方の知識を持った専門家(医師、薬剤師、登録販売者)に相談して適切な漢方薬を購入し服用してください。


熊本県 菊陽町 菜の花漢方堂

日本の夏は、胃腸が冬


『日本の夏は、胃腸が冬』


冷蔵庫は、半世紀前の1975年にはほぼ全世帯で普及し、エアコンは、1990年頃には8割以上、今では9割の世帯で普及しています。

今の日本の夏は、屋内に入ると涼しく、その中で冷えた飲食物(ジュース、アイス等)を食べることにより、胃腸を冷やし、体に冬の状態をつくってしまっているのが現状です。

 


この時期、当店では胃腸が冷えることによる次のような急性不調での相談が増えます。
腹痛、下痢、軟便、消化不良

 


ということで、今回は上記の不調に対する漢方薬をご紹介していきます。


まず、腹痛、下痢、軟便が起こっている時。漢方薬で胃腸をあたため回復を目指します。


1)附子理中湯(ぶしりちゅうとう)
2)理中湯(りちゅうとう)
3)大建中湯(だいけんちゅうとう)
4)小建中湯(しょうけんちゅうとう)

※1)~3)は成人に使うことが多く、4)は小児または高齢者に使うことが多いです。

 


もし、下痢が強く出ている時は以下を併用したりします。


5)健脾散エキス顆粒(けんぴさんえきすかりゅう)

 


消化不良が続く時は以下を併用したりもします。


6)加味平胃散(かみへいいさん)
7)健胃散顆粒(けんいかりゅう)

 


症状が長引く場合は、寒湿困脾(かんしつこんぴ)と言って
胃腸が冷えて不要な水が溜まり胃腸機能を低下させてしまっています。上記とは違う漢方薬の出番になりますのでご相談ください。

 


気をつけたいのが腹痛等の症状が漢方薬でとれると、冷たい物をすぐに摂る方がおられます。
症状はとれていますが、胃腸はすぐには回復していません。
再発しやすくなると共に、長期間、胃腸を冷やしていると重大な疾患へと繋がっていきます。


★冷たい飲食物は極力控えましょう。


 

冷たい飲食物で上記症状になりやすい方は、ご家庭に紹介した漢方薬を常備しておくと、急性の症状に対応できますよ(^^)

繰り返しになりますが、冷たい物を控えて、暑い時期を元気に乗り切りましょう(^^)

 


<注意>
本ページで掲載している漢方薬は一例です。
個人の体質、その日の体調、生活習慣、生活環境などにより使う漢方薬は変わります。
漢方の知識を持った専門家(医師、薬剤師、登録販売者)に相談して適切な漢方薬を購入し服用してください。

熊本 菊陽町 菜の花漢方堂